Symphony for A Genocide / MAURIZIO BIANCHI

イタリアの重鎮のマウリツィオビアンキ(M.B.)による本作は、数あるM.B.の作品の中でも代表作といえるでしょう。
ノクターナルエミッションズのナイジェルエアーズが創設したSterile Recordから出された本作は、それまでカセットテープ作品ばかりだったM.B.の最初のアルバムとなりました。
インパクトのあるアルバムタイトルですが、各曲のタイトルもナチスの収容所の名前となっており、M.B.のくぐもった電子音楽が収容所の情景を描写しているようです。
その後、ホワイトハウスのウィリアムベネットが主催するCOM ORGANISATIONからもアルバムを出し、ラムレー主催のBROKEN FLAGの名作コンピレーション『Neuengamme』にも楽曲を提供していました。
当時のノイズ人脈と深くかかわっていたと同時に、ノイズで活躍していた人たちから人気があったのだと思います。
AMKのBANNED PRODUCTIONからも、初期のアルバムがカセットテープで大量に復刻されていたことを覚えております。

本作を含めて、M.B.のアルバムは入手が大変難しく、アルバムがあっても、数万円するほど高価でした。
1990年代に入り、再発されることが多くなりました。
しかし、再発も発行枚数が少なく、すぐに売れ切れになることから、見かけたら、すぐに買う必要がありました。
現在も、M.B.作品は同様とは思いますが、SpotifyやYouTubeでも聞けるようになったので、音は聞こうと思えば聴けることから、余程、気に入ったものやレアなもの以外は買う必要がなくなりました。

私自身も当時『Neuengamme』がとても欲しかったのですが、どこにも売っておらず、何とかして渋谷のZESTから通販で購入することができました。
カセットテープを購入したのですが、どう見ても、普通のテープにダビングをして、ジャケットをコピーしたものを入れていた海賊版のようなものだったので、がっかりした記憶があります。
しかしラジカセから流れる音楽は、どれも新鮮でとても興奮して聴きました。

M.B.は、1980年代に大量の作品を作った後、一時期、音楽をやめていた時期もあったようです。
そのような時期を経て、現在も旺盛に作品を発表しておりますが、やはり初期の頃のアナログ的で暴力的な音が、ノイズアーティストとしてのM.B.を象徴しているような気がします。
本作を含めて、初期の作品は今でも愛聴盤になっています。