Bar Maldoror / CURRENT 93


数あるカレント93のアルバムの中で、本作を選んだ理由は、初めてカレント93に触れたのが、このアルバムだったからです。
アルバムのレコードの取り出し口が紙で2か所封じられており、それを破いてレコードを取り出すという手作り感のあるアルバムでした。
輸入レコード店で本作を見つけたのですが、カレント93の名前は聞いたことがありましたが、音自体は未体験であり、封がされていることで、視聴もできず、ジャケットのみで判断して購入しました。

家に帰って聴いてみると、呪術的でビートのない音(ボーカル)、今でいえばドローンノイズのような音が延々と垂れ流され続けられます。
何回も繰り返し聴くことはありませんでしたが、たまに抑うつ的な気持ちになった時には、この音を聞いて、更に抑うつ的な気持ちに浸っておりました。
のちに『NOISE WAR』でカレント93のリーダー、David Tibet氏が黒魔術のアレイスタークローリーに傾倒していたこと、MALDORORがロートレアモンの本に由来しているだろうことは、まったく知らず、純粋に音だけを聴いて、浸っておりました。

カレント93はその後、ゴシックフォークへ変化します。
ノイズとは似ても似つかない音楽に、当初は失望しましたが、聞いているうちに、これもありだなと思うようになりました。
カレント93とも活動を伴にしていたDEATH IN JUNEやSOL INVICTUSなどがゴシックフォーク作品を作成し、今ではひとつのジャンルとして定着した感があります。
現在でもカレント93は、ゴシックフォーク作品以外にも、本作のようなミュージックコンクレート作品も作成しており、音の形態は異なっていても、どちらも呪術てきな要素を含んでおり、私自身、好んで聴く音でもあります。

カレント93のライブは、1997年になって初めて観ることができました。
ロンドンのUNION CHAPELという教会がライブハウスになっているところで、ゴシックフォーク作品の演奏でしたが、会場とバンドの持つ雰囲気が合っておりました。
2023年にもUNION CHAPELでライブを行ったようで、YouTubeにアップされております。